診療内容
当院における乳がんの基本的治療方針
マンモグラフィー
- 乳腺に異常があるかどうかを調べる乳房専用レントゲンです。
- 検査時、上半身は検査着に着替えていただきますので、ワンピースなど上下が分かれていない洋服はできるだけ避けるようお願いします。
- 結果は当日、医師が説明します。
- *2018年1月より、最新のマンモグラフィ撮影装置を導入しました。
- 従来のマンモグラフィ装置に比べて被ばく線量が30%低減され、撮影時間も短縮します。
- また、画質の向上により、従来の機種より圧迫が少なくてすむため痛みが軽減される可能性もあり、精度の高い診断が得られます。
超音波検査
- 多くはマンモグラフィーとセットで行われます。
- 写りやすいように胸にゼリーを塗り、モニターでチェックします。
- 妊娠中でも受けられます。
- 結果は当日、医師が説明します。
細胞診
- 超音波検査でしこりの位置を確認しながら、細い針を刺して細胞を吸引し、良性か悪性かを調べる方法です。
- 結果は約1週間後です。
吸引組織生検
- 細胞診で乳がんの診断がつかない場合に、しこりの一部を取って顕微鏡で確認する組織検査です。
- 細胞診よりも太い針を使うため局所麻酔をし、吸引組織生検装置(VACORA)を用いて病巣部を採取します。
- 1時間程度で済み、傷口をテープで止めて終了です。
- 結果は約1~2週間後です。
乳がんの手術(日帰り手術)
入院による手術では、通常、全身麻酔で行われます。全身麻酔として、吸入麻酔や麻薬鎮痛薬、筋弛緩剤などが使用されますが、これらの薬剤は免疫機能を低下させることが知られており、それによりがん細胞を増殖させる可能性も考えられます。当院で使用する麻酔薬は局所麻酔と静脈麻酔であり、免疫機能の低下が少ない薬剤です。がんは免疫力の影響が大きいことが、近年明らかになっています。手術は通常の全身麻酔とは異なり、自発呼吸を残したまま眠った状態で行いますので、終了後はすぐに意識が戻ります。3~4時間程度回復室で休んでいただき、完全に目が覚めた状態で帰宅できるので、入院の必要はなく日帰り手術ができるのです。がんの病巣には乳房部分切除を行い、腋窩でセンチネルリンパ節生検を行います。がんの大きさが3cmを超える場合、腋窩リンパ節に転移のある場合には、通常は手術前に抗がん剤治療を行い、がんを小さくした上で手術を行います(術前化学療法)。手術室には、麻酔器、除細動器などの設備も整っています。乳房の全摘が必要となる場合は、基幹病院へ紹介しています。
●当院で日帰り手術を行った症例の生存率
2008年5月~2018年9月までの10年4ヶ月間におけるステージ0からステージⅢまでの乳がんに対する乳房温存手術件数は425例で、その全生存率は93.7%ですが、乳癌関連死亡以外の他病死を除いた乳癌特異的全生存率でみると97.3%です。また、病理ステージ別生存率でみると、stage II 93,7%, III 85.7%, サブタイプ別生存率ではLuminal-HER2 96.2, HER2 80.0%が良好といえます。再発は425例中21例であり、再発率にすると4.9%です。乳がんの場合、手術して約20%が再発するといわれています。乳がんは基本的に術後10年間みていきますが、この結果は好成績であり、局所麻酔+静脈麻酔法により免疫機能の低下が回避されている可能性が考えられます。赤外観察カメラシステムpde-neoによるセンチネルリンパ節の同定
- センチネルリンパ節の同定を見つける際に、「インドシアニングリーン (ICG)」という緑色の色素を乳頭直下に注入します。
ICGは赤外線を吸収する性質がありますので、赤外線カメラで観察すると、リンパ管やリンパ節が発光して見え、腋窩部でセンチネルリンパ節を同定することができます。
OSNA法による乳がん術中センチネルリンパ節転移検査
- センチネルリンパ節に転移があるかどうかの検査は、癌遺伝子解析システムであるOSNA法(One-step Nucleic Acid Amplification)と捺印細胞診を行い、ダブルチェックによる判定をしています。
- 従来の病理診断(術中病理検査)では、通常はリンパ節の一部のみの検査でしたが、OSNA法ではリンパ節全体を検査するためより程度の高い転移診断ができます。
- 手術中にリンパ節中のサイトケラチン19(CK19)mRNAを遺伝子増幅検出装置 RD-100 iで測定します。
- 最新の装置で、広島県内で当院が2施設目の導入となります。
日帰り手術に関してよくある質問
- 本当に日帰りで乳がん手術ができるのですか?
- 診察で日帰りに適応と判断された場合に行います。早期の乳がん手術の多くは乳房部分切除(乳房温存)で、切除範囲も4cm程度、転移の有無を調べるセンチネルリンパ節生検も傷口は3cm程度です。必要以上に切除しても生存率に差はありません。筋弛緩剤や人工呼吸器を使う全身麻酔による手術でなくても静脈麻酔と局所麻酔で行うことができます。日帰り手術だからといって手術の方法や内容は変わりません。
- がんの手術だから入院した方が安心というイメージがあるのですが。
- 術前には画像診断(MRI,PET-CT)で詳細に検討し、手術の方法も検査や処置も入院時と同じです。入院する方が手厚く治りが早いということもありません。日帰り手術ならその日の内に自宅に帰れるので精神的な安定につながります。又、家族や職場、ペットにとってもかけがえのない存在が入院せずに済むことは何よりだと思います。家事や仕事が多忙で時間の取れない方、入院時のわずらわしさ、心理的、経済的負担を避けたい方に適しています。
- 局所麻酔で痛みはないのでしょうか。
- 十分な局所麻酔と静脈麻酔、鎮痛剤で手術は眠っている間に終わります。全身麻酔だと完全に覚めるまで1日程かかりますが、静脈麻酔を使いますので手術終了後すぐに意識は戻ります。手術の記憶も残らず、術後の痛みもそれほどの痛みではなく、内服薬で軽減できますので安心して受けていただけます。全身麻酔に比べて回復もスムーズと言えます。
- 手術当日はどういう流れですか?
- 朝から絶飲食です。8時15分までに来院、手術時間は麻酔を含めて1~2時間です。その後回復室で休んでいただいた後、帰宅となります。止血も丁寧に行いますので術後のトラブルはほとんどありません。帰宅されてからも24時間サポート体制ですのでご安心ください。
- 手術後の通院、治療はどうなりますか。
- 手術では体内で溶ける糸を使いますので抜糸や消毒での来院はありません。術後1週間して来ていただき、その後、病理診断結果が 出てからこれからの治療を決めていきます。手術で悪いものを取ってしまえば終わりではなくて、乳がんの治療は手術からスタートすると言われています。早期で手術をしても、目に見えず画像診断でも見つからないがん細胞が他の部分に拡がっていることもあります。この増殖を抑え、再発予防のための治療を行います。一般に、がんの治癒の目安は5年とされていますが、乳がん細胞はゆっくり増殖する性質上5年以降の再発もあるので10年間はチェックが必要です。
- 費用はどれくらいかかりますか。
- 入院がない分安く抑えられます。3割負担で、1週間入院だと20万円以上かかりますが、当院の日帰り手術は15万円~で済みます。良性腫瘍の場合は大きさによりますが2~6万円です。
外来化学療法
- 化学療法は、抗がん剤を投与してがんの増殖を抑え、転移を予防し、再発の可能性を下げるのが目的です。化学療法はその目的により、術後に行う術後補助化学療法、術前に行う術前化学療法、再発後に行う再発化学療法に分けられます。術前、術後化学療法の場合、抗がん剤の作用をより強くするために、性質や効き目の異なる抗がん剤を組み合わせる「多剤併用」が基本となります。
- 乳がんはホルモン感受性(エストロゲン、プロゲステロン受容体)、HER-2、Ki-67(がんの増殖能)により、5つのサブタイプに分けられます。このサブタイプの特徴に合わせて術後の治療方針を立てていきます。
乳がんのサブタイプ | 特徴・治療方針 |
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ルミナールA | ホルモン受容体陽性、HER-2陰性、Ki-67が低い。 ホルモン感受性が強いので、化学療法は不要。 |
ルミナールB | ホルモン受容体陽性、HER-2陰性、Ki-67が高い。 ホルモン治療だけでは効果が不十分な場合、化学療法が必要。 |
ルミナールHER2 | ホルモン受容体陽性、HER-2陽性。 ホルモン治療に加え、化学療法+分子標的療法が必要。 |
HER2 | ホルモン受容体陰性、HER-2陽性。 化学療法+分子標的療法が必要。 |
トリプルネガティブ | ホルモン受容体陰性、HER-2陰性。 化学療法が有効。 |
化学療法
- EC療法(エピルビシン、シクロホスファミド)
- タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル、アルブミン結合パクリタキセル)
- TC療法(ドセタキセル、シクロホスファミド)
再発例: エルブリン、ナベルビン、ジェムシタビン、カルボプラチン等
分子標的療法
- ① HER-2標的剤 (HER-2陽性例)
- トラスツズマブ
- ペルツズマブ
- トラスツズマブ・エムタンシン
- ② 血管新生阻害剤(再発例)
- べバシズマブ (パクリタキセルとの併用)
- ③ CDK4/6細胞周期阻害剤 (ルミナール再発例)
- バルボシクリブ、アベマシクリブ (ホルモン剤との併用)
- ④ 免疫チェックポイント阻害剤 (トリプルネガティブ再発例/PD-L1陽性例)
- アテゾリズマブ(抗PD-L1抗体)、ペンブロリズマブ (抗PD-1抗体)
- ⑤ PARP阻害剤 (トリプルネガティブ再発例/BRCA陽性例)
- オラパリブ
ルミナールHER2やHER2タイプのようにHER2陽性の場合には、トラスツズマブ(+ペルツズマブ)という薬剤を使った分子標的療法を行います。
ルミナールA・BやルミナールHER2タイプのようにホルモン受容体が陽性の場合には、抗がん剤治療終了後にホルモン治療を行います。
抗がん剤の副作用は様々で個人差がありますが、それに対応する薬剤を併用したり、予防的に使用します。抗がん剤の投与時間は、使用する抗がん剤によりますが、点滴で約1時間~3時間です。ベッドやリクライニングチェアで読書など、リラックスして受けていただけます。投与間隔は原則3週間に1回で行います。
経口抗癌剤 (5-FU系)
- UFT、S-1、カペシタビン
内分泌治療
- 乳がん細胞には、女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて増殖するタイプのものがあります。内分泌治療ではこの女性ホルモンを抑制する薬剤を使用し、がんの増殖を抑え再発を予防します。
- 閉経前では、LH-RHアゴニスト(リュープロレリン、ゴセレリン)という薬剤を使用します。抗エストロゲン剤(タモキシフェン、トレミフェン)は閉経前でも閉経後でも使われる薬剤です。また、閉経後に使用する薬剤には、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)やステロイド性抗エストロゲン剤(フルベストラント)があります。
骨密度測定検査
- ホルモン治療などの影響により、骨密度が低下し骨折を起こしやすくなることがあります。1年に1回定期的に骨密度を測定し、骨の状態をチェックします。上腕で簡単に測定できます。
セカンドオピニオン
- 様々な情報が飛びかう中、自分に最適の治療法が提示されてるか、又、重大な決断をしなければならない時、他の医師に相談したくなる方も多いと思います。主治医以外の専門医の意見を聞くことで、納得した治療法を選択することができます。
- 当院では、乳がんの治療ガイドラインに沿って、あらゆる角度から丁寧に対応させていただきます。
- 相談当日に新たな検査・治療は行いません。
- 電話予約の上(ネット不可)、受診されている医療機関の紹介状、検査結果などをご持参ください。
料金(税込)
- 乳がん検診の検査結果は当日、医師が直接お伝えします。
細胞診が必要となった場合は約1週間後になります。
- 自費の場合
自覚症状はないが早期発見のため検査を希望される方。ただし、診療途中で何らかの異常が見つかった場合、保険診療に変わる場合もありますので、健康保険証はお持ちください。視触診+マンモグラフィー+超音波 11,000円 視触診+マンモグラフィー 7,700円 視触診+超音波 6,600円 - 保険診療の場合
痛み、かゆみ、しこりがある、分泌物がある、違和感があるなど、何らかの自覚症状のある方、健診などで精密検査を必要とされた方や他施設からの紹介状をお持ちの方が対象となります。視触診+マンモグラフィー+超音波 3,000~4,000円 ※3割負担時 - 受診券・クーポン券をお持ちの場合
自治体より一定年齢の方を対象に乳がん検診が受診できる「無料クーポン券」や「受診券」が送付されます。
*平成30年4月より、広島市の指針に基づき以下の2点が変更になりました。
① 視触診が廃止となり、マンモグラフィー検査のみとなりました。
視触診と超音波検査をご希望の方は3,300円で追加することが可能です。
② 症状のある方は受診券や無料クーポン券を使用することができなくなりました。
保険診療となります。ご予約の上、保険証持参でご来院ください。
- セカンドオピニオン
60分以内10,000円(その後30分毎5,000円) - お支払いについて
- 当院ではクレジットカード及びコード決済はご利用できません。
現金のみのお支払いとなります。